「地球は火山がつくった」(鎌田浩毅)

火山国日本に生きる人間の一人として

「地球は火山がつくった」
 (鎌田浩毅)岩波ジュニア新書

※本記事は2014年10月10日付けで
 他のブログに投稿した記事を
 リライトしたものです。

(2014年に起きた)
御嶽山噴火による被害が、
予想以上の広がりを見せました。
(2014年10月)9日現在で死者50数名。
戦後最大の人的被害をもたらした
火山災害となりました。
亡くなられた方々の
ご冥福をお祈りいたします。
また、これから起こりうる
自然災害において、
被害の最小化が進むよう
人智を結集させることの
必要性を感じています。

さて、今日とりあげるのは、
前回紹介した「富士山噴火」の著者が、
岩波ジュニア新書において、
中高生に向けて著した一冊です。

「富士山噴火」は、
日本の代表的な火山である
富士山に焦点を当て、
間近に迫り来る火山災害について
詳細に述べた一冊です。
それに対して本書は、
そうした火山活動の原理について、
ウェゲナー以来の
プレートテクトニクス、
そして近年提唱された
プルームテクトニクスの理論を、
中高生でもわかるように
平易に解説しながら、
巨視的な視点で説明したものです。

本書の特徴の第一は、
写真や図の視覚的資料が
豊富なことです。
私も理科教師として
常に感じることですが、
「見えないものを
見えるようにしてとらえる」ことが
自然科学を理解する上で
大切となります。
わかりやすい視覚的資料は貴重です。

特徴の第二は、
自分の経験から始まり、
最新の理論までつないでいく、
構成の妙です。
第1章で、
自分が体験した火山の被災体験を
リアルに伝えることにより、
読み手の興味を引きつける。
第2章で、
火山のしくみを分かり易く解説し、
納得させる。
第3章で、
いろいろな火山の形態を説明し、
さらに興味を掻き立てる。
第4章では、
火山の原因ともいえる
大陸移動の原理について取り扱い、
第5章では、
それを発展させた新しい理論、
プルームテクトニクスを提示する。
自分自身の思考が、
地球の内部へと
どんどん引き込まれるかのようです。

そして特徴の第三は、
説得力ある日本語です。
自然科学を教える人は
なぜか難しいことを
より難しく語る傾向があります。
筆者はそうではありません。
平易な表現を使いながら、
わかりやすい日本語を駆使して
解説しています。
こういう科学者が、
私は大好きです。

残念ながら、火山という災害を
未然に防ぐことはできません。
しかし、知識を蓄え、
火山による被害を
最小限にすることはできるはずです。
火山国日本に生きる人間の一人として、
本書をぜひ中学生に
強く薦めたいと思います。

(2018.11.7)

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